Meet the Artist

2022-12-24 21:42:00

アトリエ訪問記 vol.2 佐藤尚理さん

2回目のアトリエ訪問記は、沖縄で作陶する佐藤尚理さん。

 

佐藤さんは、シソンギャラリーのこの5年の間に、2回個展を開催していただいている、私たちも大好きな沖縄で作陶する陶芸家だ。

佐藤さんの楽しくあたたかなお人柄は、工房のある南国沖縄も彷彿とさせつつ、作品のカラフルなモチーフの絵付けからも滲み出ている。

 

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那覇から30分ほどの静な住宅エリアにある広い敷地には、自宅、アトリエ、不定でオープンする小さなギャラリー、と3つの平家建てが緑いっぱいの庭に建っている。なんとも羨ましい環境。

 

到着早々、真夏の沖縄の太陽から隠れるように、まずはアトリエヘ。

 

 

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壁一面に作陶する際の道具や試作品などが並び、幾つかある作業台には次の個展用の焼く前の大きな作品が数点、その先には大きな作品を洗うときの洗い場、その奥には窯。

 

 

「筆はすぐダメになるから20本くらい毎回買うんですよ。」

と言う佐藤さんは、焼き上がると全く違う色になる焼きものの土の色と絵付けの色や、また土からの成形に始まって、乾燥、絵付け、削り画、素焼き、化粧土、仕上げの釉薬掛け、本焼き、仕上げやすり、などなど、何回にも及ぶ作品作りの工程を細かく教えてくれた。

 

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こうして膨大な手間ひまをかけて完成される作品たちが一堂に並ぶ個展のエネルギー、それをあらためて再確認できたのが嬉しい。

 

 

陶芸作品の他にも、最近は絵画作品と、多肉植物好きが高じて始まった自作の鉢を使った鉢植え作品なども精力的に制作している。

 

「絵はここではなくて家で描いています。あの絵って一気にたくさん描けてしまうんです。色を作ったらわーっと描き、途中で壁に貼って乾かしておいて、また次の日続きを一気に描いていく、という感じで進めてるんです。」

 

 

アトリエから庭に出て、自宅前のスペースの鉢植え作品も見せてもらう。

この沖縄の気候ならではの元気すぎる植物たちの育ちぶりもあって、佐藤さんの庭は3年前に訪れた時よりかなりジャングル度が増していた。

 

 

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そして庭の一角には、沢山の多肉植物や沖縄原産の珍しい植物をはじめ、一見怪獣のようだったり、フォルムがすでに彫刻となっている植物たちがずらりと並んだスペースがあった。

農場から直接仕入れをして、水分量や日差しの加減など手をかけ時間をかけて育て、自作の鉢に植え込んだ形でひとつの作品として完成させるという。

今年のシソンギャラリーでの個展で初めてのお披露目だというこの新作品についての話をしている佐藤さんは、実に楽しそうだった。

(この時点で個展での初展開に多少のドキドキ感もあった我々だったが、十数点あった作品が早々に完売となったのである。)

 

 

アトリエ、自宅、そして最後は3棟目のギャラリーへ移動。

 

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3年ほど前に敷地内に増設したという6畳一間ほどのこじんまりしたこの空間には、手作りの飾り棚に過去の作品が少しだけ保存してあった。作品の余剰が出た時だけの不定期でのオープン形態でほとんど開店していないそう。それ以外は展示会前や終了後はほとんど配送などの作業場になっているようで、今回の訪問時もその時期だった。

 

しかしちょうど運よく、SNSでしかお目にかかることができていなかった奥様のまことさんの陶芸作品を見ることができた。リボンや花などのフォルムに渋めの色付け、そこにびっしりと柄が描かれている人気のブローチや小皿など、佐藤さんの作品世界に通じるものがありながらも違いがはっきりとわかる、また別の魅力ある作品だ。

 

 

オーストラリアなど海外での個展も含め、3年後ぐらいまではびっしり個展の予定が入っている人気作家の佐藤さん。次のシソンギャラリーでの個展は34年後となる予定。

まだまた遠いようできっとあっという間に来てしまいそうな2026年辺りを楽しみにしつつ、それまでにまた訪問させていただくことを約束して、アトリエを後にした。

 

 

佐藤尚理 プロフィール 

1974年生まれ。1996年沖縄へ移住。2000年頃から彫刻家として活動を始める。2008年夏、ドイツのミュンヘン美術大学に研究生として留学。スペイン巡礼の徒歩旅行などドイツを拠点にヨーロッパを巡る。2009年冬、帰国し陶芸家としての活動を開始。2010年春より、沖縄南城市に3ヶ月程かけアトリエを建て、以降そこを拠点に作陶。20122月、自身のギャラリー「器 bonoho」をアトリエの敷地にオープン。2013年〜現在、個展やグループ展、イベントなど様々な場で精力的に活動の幅を広げている。

 

 

訪問:20227月 

文:野口アヤ

写真:チダコウイチ